恭平の宇宙旅行


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第四章　新たな旅立ち

（一）


ppppRRRRRR
　「キョーヘイー、携帯が鳴ってるわよー」
　「はいはい」
　「おひさしぶりです。アリスよ。覚えてる？」
　「はいはい、こんにちわ、お久しぶりです。お元気ですか」
　「もちろん、バリバリやってるわ。いま、ハネダエアポートに着いたの。来てくれる？ミエットと一緒に」
　「えーと、ちょっと待ってください」
　「ミエットー、アリスさんからだけど、ハネダエアポートに来てくれって言うんだけど」
　「あらあら、はい、ミエットです。おひさしぶり！はい、はい。あ、そうですか、わかりました、すぐ行きます」
　「あなた、急いで行きましょ。えーとこの子達どうしようかしら、あ、おばあちゃんに預けてくるわね。あなた、パスポートも用意しといてね。それからクレジット持ってるわね。それから、それから・・・・」

　超スピードでエアポートに着いたキョウヘイとミエットは、３番ゲートに大急ぎ。
　「ハーイ、キョーヘイ、ミエットー」
　「おひさしぶりー」
　ミエットはアリスに抱かれて嬉しそうです。
　「おひさしぶり、元気そうね、キョーヘイ」
　「はい、おかげさまで」
　「それで、なにかお仕事に来られたんですか？」
　「あとでゆっくり話すわ。３０分後のキリマンジャロ行きに乗るから急いで！」
　「えー！」
　「あらー、どうしましょ、あの子達。ま、いいわ、おばあちゃんには後で話そ」
22:06 2014/11/05 to be continued

　「わおー、これってTCVじゃん！いっぺん乗ってみたかったんだ」
　そうです。TCV、大陸横断鉄道は磁力で浮上するリニアカーで、時速８００キロで運行しています。地球を半周するのに２４時間ちょっとかかるけど、豪華な客室と食事が大人気です。
　客室に案内されて外を見ると、スマートな駅員がホームを見渡しています。
　「あら、あの駅員、ヒューマノイドじゃない？」
　「そうみたいね。あれだけハンサムな駅員って、そういないものね」
　この時代にはJRは大量にヒューマノイドを採用しています。正確で頑丈で礼儀正しいからです。
　「何時間でキリマンジャロに着くんですか？」
　「画面を見てみて。えーと、ここは東経１４０度でキリマンジャロは４０度弱だから、２４かける１８０分の１００で、ま、１４時間ぐらいかな」
　「どんぴしゃ。あと１３時間４０分って出てます。ふーん、そーなんだ」
　「じゃ、なにかおいしいもの食べに行きましょか」
　「さんせーい」
　というわけで、ここは食堂車。ボーイさんとウェイトレスさんが立ち働いています。
　「あの人たちもヒューマノイドかしら」
　「そうみたいね」
　「なんだかハリウッドの俳優さんと女優さんに囲まれてるみたいね」
　「納得」
　豪華で優雅な食事を堪能して、チップを置いて。
　「あら、必要かしら」
　「したほうがいいんじゃない？ほらね」
　ボーイさんがウィンクしてコクリと会釈してくれました。

　個室に戻って、コーヒーメーカーでキリマンジャロを淹れて、コーヒーを飲みながら、
　「ところで、何しに行くんですか？」
　アリスさんの説明はこうでした。
9:48 2014/11/06

　モルガモンの王様から通信が来て、至急相談したいことがあるので、来られたし、とのこと。当時のチームの仲間に連絡を取ったら、オーバーザレインボー５号機が使えるから、キリマンジャロの宇宙空港に集合しよう、ということになった。
　機体はその後大幅に改良されて、第十惑星まで７年かかったのが、１年で行けるようになった。
　ケリーとクレッカに再会し、キョウヘイとミエットを呼んでモルガモンに行こうということになったのです。

　それやこれやで、１４時間の旅も思い出話に花が咲く間に終わって、はやここはキリマンジャロ・ステーション。
　「ケリーさん、クレッカさん、お久しぶりですー」
　「やあ、キョーヘイ、ミエット、元気そうだねえ」
　「長い話は抜きにして、船に乗ろう」
　「船？」
　「オーバーザレインボー５号機のことさ」
　「なるほど」
　よくわからないけど、ケリーさんたちが動き回って、国際宇宙科学財団が船を貸し出してくれたそうです。太陽系の研究目的ということで。
10:24 2014/11/06

　「ほら、あれだよ、我々の船は」
　銀色に光る流線型の宇宙船が聳え立っていました。天頂を見上げればカストゥールとポルックスの兄弟星が光っています。
　「明日の１０時に出発だ。あまり時間はないけど準備しよう。徹夜になるぞ」
　「はい！」
　作業ルームに入ると、たくさんの人が働いていました。
　「わー！ポリー！」
　「おひさしぶりっす。キョーヘイげんき？ミエットげんき？」
　キャタピラで軽快に近寄ってきたのはなつかしいポリクロームでした。
10:45 2014/11/07

　ポリクロームのほかに、レッド、イエロー、グリーン、ブルーもいたし、モバイルカートのポニー、コリー、アニー、シロ、メリーも整備が済んでいました。
　「シロの乗り心地はどうかなっと・・・。うん、よっしゃ」
　スペーススーツも確認。ポロとコロとアル、それから恭平のはシロでミエットのはメグ、みんな新品同様で早速着用しました。
　マザーシステムのママもバージョンアップしたとか。航行システムのアインシュタインは健在だし、コミュニケーションシステムのドロシーもバージョンアップ、データベースのユカワはその後データ量が飛躍的に増加したそうです。
　メンテナンスシステムのワットも、医療システムのテレサも、調理システムのグーフィーも、エンタテインメントシステムのミッキーも正常に稼動しています。
　エンジンのカリフォルニウム原子炉には１０年分のカルフォルニウム燃料が搭載されています。 あ、ニックネームはパパです。
　「はいはい、みなさん、わたしにまかせなさい」

　夜明け方、ようやく準備が終わり、ミーティングが始まりました。
　「詳しい話は出発してから話すけど、遠路ご苦労さん。あの時のようにがんばっていこう。とりあえず、かんぱーい！」
　ケリーさんが額に汗しながら言いました。
　「あのー、行くんですよね、第十惑星に」
　「そうだよ。アリスから聞いたろ？」
　「はい、でも、ね、あなた」とミエット。
　「モルガモン王からは理由は聞いてないんだ。ただ、とても緊急のようだ。私たちを信頼して依頼してきたんだと思うよ」
17:42 2014/11/07

　オーバーザレインボー５号機の航行は順調でした。その話はまた別のときにするとして、３５２日後にモルガモンに到着して、モルガモンの人々の盛大な歓迎を受けた後、王宮の会議室での話から始めましょう。
　王様の話はこうでした。
　一年前、ダイアモンド鉱山の地温が急に上昇し始め、鉱山の一部ではダイアモンド結晶が崩壊して石墨に変化して燃え始めた。半年くらい前から内部に異様な物体が露出してきて、現在、鉱山跡はすり鉢状のくぼみになり、その底に巨大な宇宙船のような物体が現れてきた。
　「これがその全体像です」
　にわとりの卵を少しぺしゃんこにしたような銀色のなめらかな物体で、宇宙船と言われればそうかもしれないような、それにしても巨大な物体でした。
18:20 2014/11/07

　「王様、案内してください。我々のシステムで調べればなにか手がかりが得られるかもしれません」
　会議室を出て、みんなはモバイルカートに乗り込みました。王様と女王様と大臣たちはケリーさんのポニーに乗りました。キョウヘイはポリクロームと一緒にシロに乗って、ミエットはメリーに乗りましたよ。
　ケリーさんはコミュニケーションシステムのドロシーに接続して航行システムのアインシュタインと通話しています。
　「アインシュタイン、どんなことが予想されるかな？」
　「いまのところ、確率７５％で宇宙船だと推定するね」
8:11 2014/11/09

（二）

　その物体は、うーん、物体という言葉はあてはまりそうになくて、やはり宇宙船だと恭平は思いました。
　キラキラ輝いていて、真珠のような光沢がありました。
　「アインシュタインから報告があったよ。放射能は検知されていない」
　ケリーさんはポリクロームに近づくように指示しました。
　「ポリー、がんばって」
　「おまかせー」
　ポリーはキャタピラをシャラシャラ鳴らして近づいていきました。結構勾配があるのですが、うまくバランスをとっています。
　と、突然、物体から長いチューブが伸びてきました。ケリーさんたちはびっくり。
　見る間にチューブはポリクロームにくっついて、・・・
　「あっ、消えちゃった」
　ポリーがチューブの中に吸い取られてしまったように見えたのです。
　「ポリー、ポリー、応答せよ、応答せよ」
　ケリーさんが呼びかけても反応なし。
　「こりゃ大変だ。なんだこりゃ」
　シーンとして、物音一つしません。
　「ケリーさん、何が起きたんでしょう？」
　「うーん、うーん、こまったなあ」
　すると、なんということか、物体は急に浮き上がりました。
　そして次の瞬間、空高く上昇して、青い空のかなたに消えてしまったのです。
　「アインシュタイン、航跡を追ってくれ」
　「アイアイサー、ケリー、・・・、あの船は、・・・、太陽の方向に向かいました」
　１５分経ちました。永遠のように長い時間でした。みんながポカンとして赤い太陽のほうを見ていると、
　「ケリー、船は今度は火星のほうに向かってます。理論的に不可能なんですが、光速を超える速さです」
　また１５分経ちました。今度はなにが起きるのか、みんな興味しんしんです。
　「ケリー、船が戻ってきます」
　青空にポツンと光ったかと思うと、大きな船が見る見るうちに近づいてきて、元の窪みにすーっと着陸したのです。
20:48 2014/11/11

　そして見たことのあるチューブが伸びてきて、ポリクロームが現れたのです。
　「おー！ポリー」
　ポリーはシャラシャラとキャタピラを鳴らして、窪みを登ってきました。
　「ただいまっす」
　「ポリー、どうしたの？なにがあったの？どこへいったの？あれはなんだったの？」
　恭平やケリーさんやアリスさんやらの声がいっぺんに混じって質問の嵐。
　「まー、まー、まー。くわしいことはあとでゆっくりはなすよー。なにはともあれ、いっしょにいきましょー」
　「え？どこへ？」
　「われらがえいえんのうちゅうえー」
　「え！え？え！！」
　それからが不思議なことですが、王様は女王様と相談なさって、双子の王子様をぜひいっしょに連れて行ってください、わが国には昔から可愛い子には旅をさせよということわざがありますのでお願いします、とかいろいろあった上で、・・・わがオーバザレインボー一行と双子の王子様は不可思議な船にポリーを水先案内にして搭乗することになったのです。
　さてアインシュタインとこれから通信できるのでしょうか。
　一行は無事永遠の宇宙とかに行けるのでしょうか。
15:00 2014/11/13

（三）

　一行は王様と王子様にお別れし、双子の王子様は王様と女王様と国のおおぜいの人たちに見送られて、ポリーの案内で不思議な宇宙船に乗り込みました。あの不思議なチューブが伸びてきて、みんなその中に入っていきましたよ。
　双子の王子様のお名前ですか？兄の王子様はカールで、弟の王子様はポールといいました。
　アインシュタインとの通信ですか？ケリーさんに聞いてみましょう。
　「ああ、それね、ドロシーに聞いたら、回線が割り当てられたそうだよ。えー、もしもし、アインシュタイン？聞こえるかな、どうぞ」
　「ああ、ケリー、感度良好だよ、ドロシーのおかげだね」
　「ドロシー、ありがとう。なんでもできるんだね！」
　「はい、おまかせ。いってらっしゃい」

　ポリーを先頭にみんなはゆっくり歩いていきました。天井も壁も真珠色に光っています。床も真珠色で、なんだか芝生の上みたいに歩き心地がいいんですね。ほどなく広い部屋につきました。ここは天井も高くて、ん！？、天井は青空？
　「ああ、あのてんじょうは、とうめいで、そとのけしきがみえまーす」
　ポリーが説明したのです。
　「ポリー、船のこと、知ってるの？」 　「はいー、ぜーんぶ、おしえてもらったよー」
　「だれに？」
　「ふねに」
　「ふねに？」
　「はいー、ふねにおしえてもらったよー。えー、なんてゆーか、いわゆるそのー　こんぴゅーた　だよー」
14:08 2014/11/16

　「ここがコックピットだよー」
　「ええ！あれー？、これって昔見たスペースシャトルのとそっくりじゃん」
　「そーだよー、これだったらほんものっぽいかなー、ふねのおすすめだよー」
　「？」
　「たんなるデザインだよー　ふねがみんなやってくれるけどー　ちきゅうじんにはこれがいいだろーって」

　「さあー　ゆこー　むげんのかなたえー」
　「ええ！もう行くの？どこへ？」
　「あんどろめだでーす」
　「えええ！！」

　「きょり２５０まんこうねん、しょよーじかん、２５ふん」
　「えーとえーと、１０万光年を１分で行くのお！？」
　「そーゆーけーさんになるかなー」
　「あれ？発射の振動がないけど」
　「もーしゅっぱつしてるよー」
　見る見るうちにわが地球は小さくなっていきましたよ。