「じょうおう へいかに もうしあげます コホン」
「りんごくより ししゃが まいりまして ございます へいか」
「おとおし しなさいな パロトン」
「あー こっちへ きなさいな」
（パロトンたら、かなり おうへい じゃない？）
背の高い紳士が陛下の前に進み、かかとをぴたっと合わせて、大きな声でこう言いました。
「えー、女王陛下におかれましては、ご機嫌うるわしく、お顔もはればれと、ご尊顔を拝したてまつって光栄しごくに存じます。はい、陛下」
「ありがと どうぞ おすわり なさいな」
「あー すわっても よろしいな コホン」
「お言葉に甘えまして。えー、我が君より、女王陛下に親書を持ってまいりましたのです。はい、陛下」
「では つつんで よませて いただきますね」
『親愛なるフルモース・フェティータ陛下
陛下におかれては、我が国へのご訪問をお望みのよし、貧王にとってこれ以上の喜びはあらしまへん。
ぜひぜひ、お早く来てください。待ってます。
陛下の第一等フアンより』
「ご返事しましょうね」
『親愛なるハールニク・バトゥルーン陛下
陛下におかれましては常日頃より愚臣をお気づかいあそばし、もったいのうございますよ
最愛の娘を連れて近々お目もじいたしたくそろ
陛下の第一等のしもべより』
（あら！）
「お嬢さまがおられるのですね、陛下」
「いますよ、そこに」
「え？ え？ えーと、陛下？」
「わたしの最愛の娘、みんみんと一緒にバトゥルーニアに行きましょう」
「えー！なんでー？ でしょうか、陛下」
陛下は遠くの方を見やりながら、こうおっしゃいました。
「まだ、あなたの星が若かったころ、バトゥルーン陛下とわたしは訪問したのよ」
「ふーん、はい、陛下」
「みんみん、二つより前のこと、おぼえてる？」
「いーえ、陛下」
「そうでしょう。みんみんが二つになるまで、バトゥルーン陛下とわたしは長い旅行をしていましたよ」
（？）
「だから覚えてないのね」
「まったく意味不明です、陛下」
「旅行するとね、いろんな意味が生れるのね」
「それってますま意味不明と思います、陛下」
「いとみとふとめとい、でしょ？ だから忘れるのよね」
「まったくわからないです、陛下」
「ま、学問の問題だからこのくらいにして、パロトン、お舟の準備できたかしらん」
「ラジャン、へいか。特別快速フェティータ・デ・ラ・ミンミンのできばえ、いかがでございましょ、へいか」
「なかなかのものよ。名前も満点ね」
「リイチイッパツツモマン、へいか」
（おじさま、あんまり上品そうに聞こえなくってよ）
「じゃ、いきましょ」
「ラジャン、へいか」
「のんちゃん ぱいろっと？」
「ラジャン ミンミン コッチニ スワッテネン」
「はーい、どこもかもきらきらして、つるつるしてんのねん。わっすてきなシート」
「みんみん、どう？すわりごこち」
「とってもいい気持ちです、陛下」
「どちらにいたしましょうか、コホン、へいか」
「そうね、カフェーかしら」
「それもけっこーでございますが、どちらにとんでゆきましょう、へいか」
「そうね、カフェドニアでどうかしら」
「ラジャン、へいか」
「どのくらいかかるのですか、陛下」
みんみんはコーヒーを飲んでいる陛下に思いっきりきいてみました。
「あら、すぐよ」
「かふぇーは、すぐできておりますです、へいか。それはさておきましてー、さよう、アリスをはんぶんよむくらいのじかんでしょう、陛下」
「そういうこと、みんみん」
「カフェーヲ ノンデ オシャベリヲ シテ ソノウチ キット ツクノカナン」
のんちゃん、おまじないみたい。
「さよう、よんぷんくらいですかな。コホン、みんみん」
（こみいってきたから、このくらいにしたほうがいいわねん）
「わかりましたん、おじさま」
陛下がみんみんの方に顔を向けておっしゃいました。
「そういえば、みんみん。プリンプランは元気？」
「は？あのお、プリン？ですか、陛下」
「プラン、プリンプランよ、みんみん」
「あのセインのかれしですよ、コホ、みんみん」
「あ いんこの・・・ はい 元気です、陛下。でも、プリンプランってゆー名前だったんですか？ ピーちゃんて言ってるんですけど、陛下」
「みんみん あなた よんしゅうかん まえの こと おぼえてる かしら」
「よく覚えてる時と、全然だめなときがあります、陛下」
「プリンプランが うまれて よんしゅうかんに なるまで バトゥルーン へいかと わたしは プリンプランと いっしょにね」
「長い旅をしてらしたんでしょ？陛下」
「はなしの こしを おるもんじゃ なくってよ みんみん」
「すみません、陛下」
「パロトン ようつうの おくすり ここに ぬって くださいな」
「ラジャン へいか」
「でね なとがといとたとびでしょ いいかげんに わすれるわよね そういうわけで プリンプランは バトゥルーン へいかと わたしのことを わすれているかも しれないわ」
「そんなこと ございませんですよ へいか」
「ありがと そう あって ほしいわ やさしいのね パロトンは」
「リイチイッパツツモマン へいか」