汝何を知らんと欲するや
第18号 22:05 2012/10/09
光の音
以前、試した事がある。金属とガラスの組み合わせの玄関のドアを閉めて、内側から、トヨタカローラRUNXのリモコン附きのキーのボタンを押したら、ちゃんとRUNXのテールランプが光って施錠された。
キーのシステムから発射された光子の束がRUNXのシステムに届き、解読され、かくして施錠された。
何という奇跡。しかし、これらすべてのシステムは一から人間が発明したものだ。無論、私でない極めて高度な知識を持った人間がそうした。
人間の技術のことはともかく、光子の集団がいかにして情報を伝えることになるのか、真剣に考えてみることにした。
疑問はいくつかある。光子は、金属とガラスの集合体である玄関のドアをいかにすり抜けたのか。
もう一つ。RUNXのシステムは光子を如何に感知したのか。
これまた以前、試した事だが、プロジェクターのリモコンの先端を携帯のカメラで写しておいて、リモコンのボタンを押したら、レンズが白く点滅して映った。これは物の本によれば、リモコンが発射する光の波長を、携帯の受光素子が感知しているからだそうだ。
この現象を考えると、ぼくがなにを解ってなくて、また、なにを解ろうとしているのかが、わかった。
まず、光子がすり抜けることはないではないか。エックス線ではないんだから。仮にエックス線でもおかしいとは思うがこれはまた別の話。普通の光、色彩を感じる光は目の前で反射したり、多少吸収されたりする。でもRUNXに届いている筈の光は、確かに届いている。光というのは波じゃないか。光の海は空間を満たし、波紋は広がってRUNXのシステムに届く。
二つ目。リモコンの光だ。01の信号として解釈されるべき光子の集団がプロジェクターのシステムに届き、スクリーンにコンピュータが像を表示する。点滅の長短が01に対応している。この光は赤外線らしい。もしぼくの眼が電波を見れるならば、電波塔を見ると、チカチカ点滅しているだろう。虹色の光が棒状の物から、または椀状の物から花火のように発射されてるように見えるだろう。
01の信号に象徴させて情報を処理するシステムの神秘は驚異的だが、この仕組みを理解する頭はぼくにはない。ただ、ぼくには生物としての偉大な機能が備わっている。聴覚中枢だ。
なぜ、こんなことを言うかというと、エジソンだ。かの大天才エジソンが発明した物の中で、ぼくが一番神秘的だと思うのがレコードだ。
たった一本の針の軌跡がすべての音の記録と再生を管理すると言う。音楽、音声、その中に複数存在する音源、音色。そのすべてをたった一本の軌跡が記録している。音源と01の間にはただ一枚の振動膜があるだけだ。エジソンは振動膜に接して偉大なるシステムの原理を発明した。
ぼくの聴覚システムは遥か太古より継承された優れ物だ。音の波は外耳の果てにある薄い鼓膜を振動させ、細かい骨を経て、蝸牛の液を振動させ、波長ごとに神経線維を駆け上って聴覚中枢に至る。
待ち構えていた中枢では即座に音源に分解し、仮想空間に音源を配置する。こうして三次元の演奏がリアルタイムに再現される。
RUNXを動かしたのは光子の波ではないか。システムは光子を音を聴くかのように処理していると思われる。いま、こうしてキーボードを叩いて文字を表示させ、htmlファイルに保存し、FFFTPで送信し、GoogleChromeの画面を更新させると、目の前のメモ帳の内容の同等がただちに表示される。この間に内在する無数のシステムが自動的に処理した結果だ。これは人間が作った奇跡だ。いや、奇跡というのは仕組みを知らない者が、無条件に働きを称賛する言葉だ。奇跡じゃなくて人間の驚異的な科学力だ。
無数のシステムは如何にして情報を処理したのか。回路を走る電子はなぜ自分が動くかを理解していない。理解する必要もない。ポテンシャルが形成する道に従い走っているだけだ。ただ、電子が走るのかというとこれはまた別の問題。
入力回路は入力を感知する。センサーが信号を感知する。電圧の変化、電流の変化、磁場の変化、なんらかの変化を感知し、プログラムが起動し出力が生産され、ただちに隣接の回路に伝達され、それが無数に繰り返され、やっとGoogleChromeに辿り着く。その間、ナノセカンド、マイクロセカンド、ミリセカンドだ。回路の中の電子は疲れを知らない子どものように従順に動き、ほめられもせず、報酬もなく。
6:07 2012/10/10 to be continued
さて、光の音だけど、なぜこういうかと言うと、ぼくの聴覚中枢のように、システムのセンサーは行列となって押し寄せてくる波を分解してる、ということだ。光の行列は膜を振動させ、システムは発生の原因を再構築して推測する。
携帯から発射された光の波は。アンテナに電子の波を作り、システムに伝達される。これは音を聴くのと同等だ。だから光の音。
それで、最初の疑問。車のキーから発生した光の波は、光の海を伝わり、ドアの向こうに流れてRUNXのシステムに感知される。
つまり、空間は光の海に満たされている。
RUNXは如何にして光の波を感知したか。それは音を聴くように、耳を澄まして特定の音楽に敏感になって信号の意味を同定して、施錠し、テールランプを点滅させた。
22:11 2012/10/11 to be continued
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