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仮想自分＝存在Ｘ
第1巻
第2話
やあ、オングストロームちゃん。かわいいねえ
「おとなにむかって ちゃんとか、かわいいねえとかなにごとか。ま、おさないからゆるしてあげよー。ところできみはなにをしよーとしてるのかなー」
7月10日（木）快晴のち夕方大荒れ。
生命は完璧だ。原子の構造物がこんなに意味ある行動をしている。宇宙をひた走るかと思えば、地球にとどまって複雑怪奇な集団を作り互いに反応する。
見えるということは不思議だ。瞳孔から入った光が網膜の細胞を刺激し、情報はパルスになって中枢に届き、外の世界を知らない細胞集団が情報を解析すると、中枢の内部に外界と同じ光景が再現される、と思うが、中枢にはスクリーンはないだろう。それを見る何者かがいるわけではないだろう。
音も同じだ。複数の音源から伝わった振動が鼓膜を震わせ、聴覚細胞の繊毛を揺らした情報は中枢に届き、外の世界を知らない細胞集団が情報を解析すると、外界と同じ音源を再現する。スピーカーがあるわけじゃないだろう。
まるで私という幽霊がスクリーンを眺め、スピーカーの音を聞いているみたいじゃないか。
「そろそろおやすみしたほーがいいんじゃないかなー」
「わたしもそう思います」
第1巻
第３話
まだです